三話”何か”


 

“何か”

今朝工房に入ると

向かいの山から朝陽が差し込んでいた。

“あ 美しい 今”

となった瞬間である。

そこへ幸福感がやって来た。  

ものや空間には実用だけに収まらない

作用が混在している。

日々の中にそんな些細な瞬間が

そこかしこに散りばめられているが 

それは己の心次第。

最近はものの価値について深く向き合っています。

特に古物と作家物(名のある物)。

このふたつの交わる点を捉えたい。

“何か”の視点または思想の枠を飛び出して

見据えなくては見えない世界。

“何か”という感覚的にしか捉える事の出来ない性質。

精神や霊性といった現象に近く

目には見えないけど 

確かにそこに存在していて

わたしたちはそれを感じる事が出来る。

例えば古物の通ってきた道。

それはそこへ向けられた意識の痕跡が

わたしたちは見えているのではないか。  

道の途中で起きた様々な事象。

良いも悪いも全部まるごとそこに在り

善し悪しも超越したあるがままの姿。

そう。それはここに在る。

今ここに わたしたちと共に存在している。

“もの”というかたちの現象に混在している

”何か“という存在。

あゝ 何か様よ。あなたは一体どちら様。

 

2024,3,22

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